旅の記録

旅ブログです。

20180821 第100回全国高校野球選手権記念決勝 金足農×大阪桐蔭観戦記

準決勝から一夜明け、8月21日早朝。私はまた甲子園球場行きの電車の中にいました。

これで木曜から5日連続の甲子園です。よくもまあ懲りないなあと我ながら思うのですが、それでも向かったのは今日が“夏の甲子園第100回目の決勝“が行われる日だったからに他ありません。

その試合は間違いなく、私が生きている内に見られる最もメモリアルな試合となるでしょう。しかもその中に、私の地元である大阪桐蔭がいて、対する金足農もここ数年で最も旋風を巻き起こしているチーム。

そして何より、昨日の準決勝ではNikon COOLPIX A900が途中で充電切れを起こしてしまったことで、根尾や藤原、中川といった大阪桐蔭の選手たちの勇姿をフィルムの中に収められなかった。この悔しさが強い原動力となり、気付いたら甲子園行きの電車に乗り込んでいたのでした。

 

f:id:togesohei:20190222113511j:plain

現地に到着したのは午前7時頃。昨日よりもさらに遅い時間での到着でしたが、今日は決勝戦1試合のみで、試合開始も午後2時からと若干遅めだったことから、これぐらいの時間でも大丈夫だろうと踏んでいたら、案の定大丈夫そうな感じでした。

しかし、チケットの列は今回もチキってアルプス席の方へ。もちろん大阪桐蔭側の三塁側の列に並びましたが、今日は昨日と比べれば大分空いている印象でした。むしろ金足農の一塁側アルプスの方が遥かに並んでいましたね。

 

f:id:togesohei:20190222113537j:plain

無事チケットを購入して、その後は試合開始まで時間を潰すためにこちらのショッピングモールにお邪魔してみました。Corowa甲子園という元ダイエーの跡地に出来た建物で、開場の8時前から既にこの人だかり。皆目的は一緒のようです。

ここでしばらく体を休め、午前10時の本格的な開店と同時に建物を出ました。試合開始まではあと4時間もありますが、もう他に時間を潰すような所もない気がしたので、そのまま球場の中に入ってしまいました。(が、後から考えると甲子園歴史館にもう1回行っとけばよかった…。)

場所は昨日と同じく、内野席付近後方の席を確保しました。あとはただひたすら試合開始の時を待つだけです。

 

f:id:togesohei:20190222113606j:plain

…が、さすがに暇だったので、お昼時ということもあり甲子園名物・甲子園カレーをこのタイミングで食べてみました。見た目はこのとおり屋台でよくあるビーフカレーといった感じで、味もまあ普通。結構久しぶりに食べたので「あれ、こんな感じだっけ!?」とちょっと意外には思ったのですが、まあ美味しく頂きました。

 

f:id:togesohei:20190427224443j:plain

それからまたひたすら待って、午後1時頃。ようやく大阪桐蔭の選手達が球場に姿を現しました。

 

f:id:togesohei:20190427224528j:plain

まずはウォーミングアップのキャッチボール。正捕手の小泉(背番号2)、ショート兼ピッチャーの根尾(背番号6)らが軽快にボールを回していきます。

 

f:id:togesohei:20190427224608j:plain

こちらは背番号8を付けるセンターで4番の藤原。彼は中学時代ピッチャーをやっていたということで、フォームもこのとおり様になっています。

 

f:id:togesohei:20190427224648j:plain

f:id:togesohei:20190427224731j:plain

続いて金足農の選手達も一塁側でキャッチボールを始めました。昨日の試合で完投したエース・吉田も遠投で肩を温めています。

 

f:id:togesohei:20190427224813j:plain

f:id:togesohei:20190427224915j:plain

時刻は午後1時25分過ぎ、グラウンドでは大阪桐蔭の試合前ノックが開始されました。西谷監督の放つノックを内野陣が軽快に捌いていきます。

 

f:id:togesohei:20190427224954j:plain

ブルペンでは、こちらも昨日完投したばかりの背番号1を付ける柿木が投球練習を行っていました。その横では、バットで体を支える西谷監督が柿木の状態をじっくり確認しています。

 

f:id:togesohei:20190427225053j:plain

f:id:togesohei:20190427225125j:plain

f:id:togesohei:20190427225157j:plain

続いて金足農のノック。投球練習を終えた吉田の顔には笑顔が見られます。

 

f:id:togesohei:20190427225238j:plain

スクリーンでは、本日のスターティングラインナップが発表されました。先攻の金足農、後攻の大阪桐蔭共に昨日とメンバーは変わらず。吉田・柿木両投手は連投となります。

 

f:id:togesohei:20190427225315j:plain

f:id:togesohei:20190427225350j:plain

運命の試合開始まであと15分と少しとなりました。ノックを終えた両チームの選手達が試合前の挨拶に来、応援団に向かって一礼。一・三塁側共大きな声援が送られました。

 

f:id:togesohei:20190427225433j:plain

客席の方もほぼ満席に埋まってきました。スクリーン上の旗は右から左へとはためき、甲子園特有の浜風が吹いているのが分かります。清々しい夏空の下、第100回目の栄光を掴むのは果たしてどちらのチームでしょうか。

 

f:id:togesohei:20190427225506j:plain

f:id:togesohei:20190427225533j:plain

そして時刻は午後1時59分、遂に両チームの選手達がグラウンドに整列し、挨拶。後攻の大阪桐蔭のナインがグラウンドに散っていきました。

 

f:id:togesohei:20190427225615j:plain

マウンドで投球練習を行うのは大阪桐蔭の先発・柿木。彼は今年の春の選抜でも背番号1を付けていましたが、最後の決勝は背番号6の根尾にマウンドを譲るという悔しい経験もしていました。それから4ヶ月以上が経ってこの日、遂に念願の甲子園決勝のマウンドに立っています。

 

f:id:togesohei:20190427225647j:plain

f:id:togesohei:20190427225824j:plain

試合開始に先立って、今大会恒例の「レジェンド始球式」がまず執り行われました。栄えある決勝戦の始球式を務めるレジェンドは、松山商OB・井上明氏と三沢高OB・太田幸司氏のお二方です。

 

f:id:togesohei:20190427225902j:plain

今から約半世紀前の1969年夏、松山商×三沢の決勝戦は0-0のまま延長18回を終えても遂に決着が着きませんでした。史上初の決勝引き分け再試合となったこの伝説的な試合で、壮絶な投げ合いを見せたのが井上氏と太田氏のお二人です。

まさに甲子園の決勝に最も相応しい“レジェンド“の人選と言えるでしょう。まずは井上氏が、次いで太田氏が始球式のボールを投じました。それにしても、あれから49年が経って、再び超大観衆の甲子園のマウンドで投げる日が来るとは、お二人ともまさか思いもしなかったのではないでしょうか。

 

1回表

 

f:id:togesohei:20190427234835j:plain

バッターボックスには1番の菅原天が入り、いよいよ第100回目の決勝がプレーボールです。柿木が投じた第1球目は、内角低めに直球が決まってストライク。4球目、菅原天はスライダーを打つも打球はセカンドへのゴロ。山田が落ち着いて捌き、大阪桐蔭がまず1アウトを取ります。

続く2番の佐々木大夢は、フルカウントから直球を打つもライトフライ。3番・吉田は外角低めの直球に三球三振に倒れ、金足農、初回の攻撃は三者凡退に終りました。

 

1回裏

 

f:id:togesohei:20190427234910j:plain

変わってマウンドに上がったのは、今大会最注目選手の一人にのしあがった金足農の絶対的エース・吉田輝星。この夏は県大会の初戦からここまで全て一人で投げ抜き、片田舎の公立高校を県勢103年ぶりの決勝進出に導いています。まるで漫画の主人公のようなここまでの活躍ぶりですが、秋田県勢の期待を一身に背負って今日、夢の全国制覇なるか。

その吉田に対するは、史上初・二度目の春夏連覇まであと一勝と迫る大阪桐蔭打線です。大阪桐蔭は、昨夏も同じく春夏連覇を目論んでいましたが、三回戦の仙台育英戦でまさかの逆転サヨナラ負けを喫しました。あの瞬間、ちょうどグラウンドでプレーしていた柿木、中川、山田、藤原、根尾…といった面々が最上級生を迎え、並々ならぬ想いでこの偉業に再チャレンジしてきました。

 

f:id:togesohei:20190427235145j:plain

旧チームから勝つことを宿命付けられた今年のチームは、2年連続で春の選抜を制すると、夏も遂に決勝まで勝ち上がってきました。その打線の口火を切るのは、最上級生になってレギュラーを掴んだレフトの宮崎です。対する吉田の初球は、変化球が高めに浮いてボール。フルカウントとなって投じたボールは、指が引っ掛かったか直球が低めに外れフォアボール。大阪桐蔭、先頭打者出塁です。

 

f:id:togesohei:20190427235221j:plain

f:id:togesohei:20190427235300j:plain

走者を一塁に置いて続くバッターは、こちらも同じく最上級生になってレギュラーを掴んだ2番の青地。左バッターボックスに入った青地は、吉田の球を上手く流し打ちして、打球は三遊間を抜けました。レフトへのヒットとなり、さらに一塁走者の宮崎は二塁を蹴って三塁へ進みました。

 

f:id:togesohei:20190427235342j:plain

大阪桐蔭特有の隙を逃さぬ走塁で、無死一・三塁といきなり得点のチャンスを作り出しました。一方の吉田としては、これからクリーンナップが続くピンチの場面。

 

f:id:togesohei:20190427235432j:plain

ここで打席に入るのは、キャプテンとしてここまでチームを引っ張ってきたサードの中川です。中川は前述した昨夏の三回戦でも、3番・ファーストで先発出場していましたが、1-0とリードして迎えた9回裏二死、あと1アウトで試合終了というところで、ショートへの平凡なゴロからの送球をまさかのベース踏み損ねでセーフにしてしまいます。そしてその直後、マウンド上の柿木がショートの頭を越える逆転サヨナラ打を浴びて、チームはまさかの敗戦…。

まさに悪夢のような幕切れで、試合直後の中川は涙が溢れて止まりませんでした。しかし、それから一夜明け、西谷監督が直々にキャプテンに指名したのは何と中川でした。それ以来チームを引っ張ってきた中川ですが、心の中では「あの時、自分がしっかりベースを踏んでいれば……」という想いをここまで抱え続けてきたことでしょう。そんな自責の念を払拭するまで、あと一勝まで来ました。

ベースにバットの先をコンコンと叩くいつものルーティンで打席に入った中川。対するマウンド上の吉田は、このピンチにさっそくギアを入れ換えてきたか、140km台中盤のストレートを連発します。先程はせいぜい130km台の球速でしたから、明らかにボールの勢いが違います。1-2と追い込み、最後は落ちるスライダーで中川を空振りの三振。吉田、まず1アウトを奪いました。

 

f:id:togesohei:20190427235531j:plain

しかし、今年の大阪桐蔭打線はここからが全く気を抜けません。続く藤原も昨年からのレギュラーですが、昨春選抜の決勝でホームランを2本放っており、今夏もここまで3本、計5本のホームランを甲子園で放っている強打者です。打率も今大会は4割を優に超えています。

対する吉田は、やはりここもギア全開で来て140km台中盤の球を連発します。カウント1-2に追い込んでからは、またも内角にスライダーを投じて空振りを奪いました。結果藤原も三振で、これで3,4番を連続して三振に切って取るという圧巻のピッチングです。

 

f:id:togesohei:20190427235609j:plain

これで無死一・三塁が二死一・三塁になりました。大阪桐蔭の怖いクリーンナップを迎えてからのこの集中力とギアの切り替え様は、さすが吉田だとしか言いようがありません。

続いて打席に入る根尾も、昨年から甲子園で活躍を続けているバッターですが、一塁側からの大声援も後押ししてやはりカウント1-2にまで追い込みます。しかし、その後の吉田はスライダーではなく直球を連投。それに対して根尾は冷静に見極めて、結果はフォアボールとなりました。今年の大阪桐蔭は3,4番が打ち取られても、続く5番の根尾がそうもいかないところが、強さの要因の一つと言えるでしょう。

 

二死満塁となって、続くバッターは6番の石川。石川は今大会、序盤は今一つ当たりが出ていませんでしたが、準々決勝でホームランを放つと、昨日の準決勝でも2安打2打点と復調の気配を見せています。

その石川に対する初球、吉田が投じたスライダーは外に外れてキャッチャー取れず。ワイルドピッチとなって三塁走者が生還し、大阪桐蔭がまず1点を先制しました。

逆に点を取られた金足農としては、ミスから失点するという一番避けたかった点の取られ方となりました。嫌な流れが漂う中、それでも何とか石川をフルカウントまで持ち込み、しっかり間合いを取って投じた勝負の6球目。ストレートがシュート回転して中に入ると、その甘い球を石川、逃さず流し打ち。打球は鋭く右中間を抜け、さらにランナー二人が帰りました。

 

f:id:togesohei:20190427235642j:plain

スコアは3-0となり、打者走者の石川も二塁へ。守る金足農としてはいきなり苦しい展開となりました。

 

f:id:togesohei:20190427235732j:plain

続く7番の山田も、昨年からレギュラーを張っている選手の一人です。非常に勝負強く、また甲子園で2本のホームランを放っている山田が7番に座っているというのも、今年の大阪桐蔭の怖さの一つと言えるでしょう。

その山田の第1打席は、内角に来た直球をセンターへ弾き返します。が、ここは吉田の球威が勝ってセンターフライに。これで3アウトチェンジとなりましたが、大阪桐蔭としては幸先良く3点を先制しての初回の攻撃となりました。

 

2回表

 

f:id:togesohei:20190427235808j:plain

二塁からファーストの守備位置に就つ石川。石川はこれで3試合連続でタイムリーを放つという活躍ぶりです。

一方の金足農、3点を追う攻撃は4番の打川から。2球目、内角のボールを上手く肘をたたんで打つと、打球はセンター前へのヒットとなりました。金足農も先頭打者が出塁です。

 

f:id:togesohei:20190427235912j:plain

続くバッターの5番・大友は最初からバントの構え。点差は3点付いていますが、手堅く1点ずつ返していこうという寸法でしょう。

対する大阪桐蔭内野陣は、中川をはじめ猛烈なプレッシャーをかけて応戦します。大友は初球を見送るものの、2球目、相手内野陣を上手くかいくぐるバントを一塁線に決めて、送りバント成功。これで一死二塁と得点圏のチャンスを作りました。

続いて6番・高橋も4球目、真ん中に入った直球を見逃さず、打球は三遊間を抜けるレフト前ヒットに。二塁走者は三塁へ進み、金足農一死一・三塁とさらにチャンスを広げました。

 

f:id:togesohei:20190427235938j:plain

点を取られてもすぐさま打撃陣が奮起する。吉田ばかりが取り沙汰される金足農ですが、この積極的かつ手堅い攻撃も、間違いなく決勝まで勝ち進んだ要因の一つでしょう。

さあ反撃の1点を、といきたいところでしたが、続く菊地彪の打席、カウント2-2からの5球目の場面で、何と三塁ランナーが飛び出してしまいました。大阪桐蔭はこれを冷静に対処し、三本間に挟み込んでタッチアウト。金足農、今度は攻撃でもミスでチャンスを潰してしまい、らしくない展開が続きます。

 

f:id:togesohei:20190428000014j:plain

菊地彪は結局フォアボールで出塁しましたが、続く菊地亮の打球はショートへの高いバウンドのゴロ。大阪桐蔭のショート・根尾がこれも冷静に捌いて3アウトチェンジ。金足農、絶好の反撃の機会を逃しました。

 

2回裏

 

f:id:togesohei:20190428000116j:plain

ピンチを切り抜けた大阪桐蔭の攻撃は8番の小泉から。小泉は今日が18歳の誕生日ということで、三塁アルプスからはハッピーバースデーの曲がまず流れてきました。和やかな雰囲気の中、小泉の第1打席はインハイのボール球に手が出てしまい、キャッチャーファーフライに倒れます。

続く9番の柿木は2球目、スライダーを引っ掛けてファーストゴロ。トップに帰って1番の宮崎は、3球目を打ちにいくも直球の勢いに押されてセカンドフライ。吉田、この回はポンポンと三者凡退に切って取りました。

 

3回表

守備で作った良いリズムを攻撃にも繋げたい金足農の攻撃は、9番の齋藤から。齋藤はフルカウントまで粘ると、最後は外角に僅かに外れた直球を見極め、フォアボールを選びます。金足農、前の回に続いて先頭打者が出塁しました。

トップに帰って1番の菅原天は、やはり手堅く送りバントの構え。初球、しっかり一塁側に転がしてまたも送りバント成功。一死二塁と再び得点圏のチャンスを作り、打席に入ったのはキャプテンの佐々木大夢。その初球、柿木が投じたスライダーは暴投となり、二塁ランナーは三塁まで進みます。

 

f:id:togesohei:20190428000208j:plain

f:id:togesohei:20190428000300j:plain

そしてその直後の投球、シュート回転して内に入った直球を佐々木大夢見逃さず、しっかりと流し打ちして打球はライトへ。

 

f:id:togesohei:20190428000338j:plain

ライトの青地捕りましたが、三塁ランナーが帰って犠牲フライとなり、金足農1点を返しました。これでスコア3-1。

 

f:id:togesohei:20190428000406j:plain

走者は無くなり、続くバッターは3番・ピッチャーの吉田。2球目、吉田の打球は鋭い当たりが一塁線へ飛ぶも、ここはファーストの石川が上手く反応して処理し、3アウトチェンジとなりました。

 

f:id:togesohei:20190428000457j:plain

大阪桐蔭、金足農の反撃を1点に止めました。元気良く三塁側ベンチに帰る右から中川、山田、柿木。

 

3回裏

2点差に詰め寄られた大阪桐蔭ですが、この回の攻撃は打順良く2番の青地から。青地は右中間への飛球を放ちますが、予め右中間寄りに守っていたライトが捕って1アウト。

しかし、続く3番の中川は、カウント2-2から高めに浮いた直球を叩いて、打球はショートの横を抜けました。レフト前ヒットとなり藤原、根尾の前にランナー出塁です。

 

f:id:togesohei:20190428000548j:plain

f:id:togesohei:20190428000621j:plain

続く4番・藤原の打席は、吉田の全力投球に対し藤原もフルスイングで応えるという見応えのある勝負となりました。まずはカウント0-2と吉田が追い込みます。が、そこから藤原が2球粘ってからの5球目、外角のボールをセンター返し。センター前に打球が落ちる間、一塁走者の中川は二塁を蹴って三塁へ。そして何と打者走者の藤原も二塁へ!

 

f:id:togesohei:20190428000720j:plain

快速飛ばして一気に二塁まで陥れました。普通なら明らかに一塁ストップとなる打球がツーベースになるとは…、藤原はやはり足の速さについても超一流です。

さて、状況は一死二・三塁となり、大阪桐蔭追加点を奪う絶好のチャンスとなりました。続く5番の根尾に期待がかかりますが、ここは初球を打ち上げてしまい、ファーストファールフライに倒れます。

 

f:id:togesohei:20190428000755j:plain

二死となり打席に入ったのは、前の打席でタイムリーを放っている6番の石川です。吉田としてはここも気を抜けないバッターですが、結果はまたしても初球を手を出しセカンドフライ。大阪桐蔭チャンスを逃しましたが、反対に金足農・吉田の粘りのピッチングが光ります。

 

4回表

 

f:id:togesohei:20190428000849j:plain

何とか点差を縮めたい金足農は、前の打席でヒットを放っている4番の打川からの攻撃です。2球目、柿木が投じた緩い球をしっかりセンター前に弾き返し、2打席続けてのヒットで出塁しました。

続く5番・大友はやはり送りバントの構え。初球、まるで精密機械のようにゴロを一塁線へ決めて、送りバント成功。金足農はこれで3イニング連続して得点圏のチャンスを作り出しました。

続くは6番の高橋ですが、ここは初球低めの直球に手を出してショートゴロ。しかし、次の7番・菊池彪の打席はフルカウントまで粘り、最後は指に引っ掛かったような直球を見極めフォアボールで出塁。一方、柿木はこれで今日3つめのフォアボールを与えました。準決勝までの与四死球は1試合につき1個のペースでしたから、今日は少しコントロールに苦しんでいる印象があります。

二死一・二塁となり、続く8番の菊池亮はシュート回転して内に入ったボールを右方向へ流しましたが、打球は詰まって結果はファーストゴロ。金足農、この回はチャンスを得点に結びつけられませんでした。

 

4回裏

対する大阪桐蔭の攻撃は7番の山田から。この打席、吉田は3つ続けてストライクを外し、3-0とボールが先行します。それでも何とかフルカウントまで持ち込み、最後は平凡なセカンドへのゴロに打ち取ります…が、セカンドからの送球がワンバウンドしてファーストが捕れず。結果は二塁手の失策で、先頭打者が出塁しました。

続く8番・小泉は送りバントの構えですが、ここもボールが先行してカウント3-1に。そして5球目、バッターはヒッティングに切り替えますが高めを空振りしてまたフルカウントに。ここで吉田、しっかり長めの間合いを取って決め球のストレートを投じるも、結果は外角低め僅かに外れてフォアボール。無死一・二塁と大阪桐蔭がチャンスを広げます。

続く9番の柿木はスリーバント失敗で、1アウト。打順は1番に帰って宮崎、3順目の打席です。宮崎は今日はここまでヒットがありませんが、さすがに3順目には合わせてきました。2ストライクからの内角の直球を完璧に捉えると、打球は浜風に乗って左中間へ!レフトは打球を追うのを早々に諦め、ボールはスタンドへと吸い込まれていきました。

 

f:id:togesohei:20190428000933j:plain

大阪桐蔭、この試合を決定付ける3ランホームランがここで飛び出して、点差を5点に広げました。対する金足農としては、エラーとフォアボールというミスがまたも絡んでの失点となり、この点差はもはや致命傷です。

さらに2番・青地の打球もレフトスタンドに迫る大飛球でしたが、ここはレフトが捕って2アウト。続く3番・中川の打席は、1-2から外角低め一杯に直球が決まって見逃しの三振。結局、ホームランの後はしっかり抑えた吉田ですが、スコアは4回を終わって6-1と、金足農にとって厳しい展開であることには変わりありません。

 

5回表

 

f:id:togesohei:20190428001011j:plain

自身がホームランを放ったレフトの守備位置に就く宮崎。宮崎は今年の春の選抜決勝でも決勝打となるタイムリーを放っており、大舞台での勝負強さが光ります。

一方の金足農は、点差は付いたものの何とか1点ずつ返して反撃に出たいところですが、先頭の9番・齊藤は外のスライダーを空振りの三球三振。1番に帰って菅原天は初球、内角のボール球を引っ張ってファーストゴロ。2番・佐々木大夢は外角低めの直球に手が出ず、見逃しの三球三振。柿木、この回は僅か7球で三者凡退に切って取り、金足農に反撃の糸口を掴ませません。

 

5回裏

守備でも流れを作り、俄然勢いづいてきた大阪桐蔭の攻撃は4番の藤原から。金足農バッテリーは、前の打席は直球を中心にして組み立ててきましたが、今回はスライダー中心の配球でした。2ストライクと追い込んでから投じたスライダーは、低めのボール球。しかし、藤原は片手一本でこれをすくうと打球はライト前に落ちるヒットに。まさに技ありの一打で大阪桐蔭、先頭打者出塁です。

 

f:id:togesohei:20190428001053j:plain

俊足の藤原を一塁に置いたところで、打席には5番の根尾。根尾も今日はまだヒットが出ていませんが、3打席目を迎えて合わせてくるかどうか。対する吉田は本日の投球数が100球を超えてきました。

勝負の方は、吉田がポンポンと2球ストライクを取って根尾を追い込みます。それからの1球はまた長い間合い……。

1…2…3………、まだ投げない……。

 

4…5…6……、今回はまた特に長いぞ……。

 

…私はこの様子をスタンドから見ていて、昨日の準決勝・対日第三戦、4回裏の吉田の投球を思い出していました。あの時も、吉田は二死一・三塁というピンチの状況から、長い間合いを取りつつ3球牽制を挟み、最後はクイックからの釣り球でバッターを空振り三振に仕留めたのでした。普通、並の人間ならこういうピンチの時は焦りから行動が早くなってしまいがちですが、彼は逆に落ち着いて時間をかけて、自分のペースに持っていく…。本当にただ者ではない高校生だなと、改めて感心してしまいました。

 

……しかし、この空間にはそんな吉田を上回る存在が一人いました。それが今バッターボックスに立っている根尾です。

 

……7…8……。あまりにも長い間合いに、溜まらず根尾も右脚を少し上げてタイミングを取り始めました。そして……9……、10秒近く時間をかけた末、ようやく吉田の右手からボールが投じられました。コースは外角高めのボール球、140kmの直球。

そのボールに対し、根尾は一切集中を途切れさせていませんでした。スイングして当たった箇所はバットの先のようでしたが、センター方向に弾き返された打球はグングン伸びる!そのままバックスクリーン深いところまでボールは飛び込みました!特大の2ランホームラン!!

 

f:id:togesohei:20190428001122j:plain

ダイヤモンドを一周してホームに帰ってくる根尾。それに対して吉田はがっくりとうなだれた様子です。あの一球は、吉田にとっては十分決めにいったボールだったでしょう。これまでの相手なら大体は空振りか、せいぜいファールぐらい…。それがあんな完璧な打球となってしまうとは、これまでの経験からは想像できなかったのではないでしょうか。

…その後の吉田は、集中の糸がぷっつりと切れてしまったようで、そして完全に悪い流れに嵌まっていきました。

 

続く6番の石川はファーストフライに打ち取るも、7番の山田は鋭い打球がレフト前へ落ちるヒットに。さらにレフトが処理にもたついている間に二塁へ進みます。7点差がついても大阪桐蔭、未だ隙のある走塁を見せません。

 

f:id:togesohei:20190428001201j:plain

一死二塁となり、ここでさすがに金足農ベンチが今日初めての守備のタイムを取りました。伝令を含めた7人がマウンドに集まり、冷静さを取り戻そうとします。吉田にも少し笑顔が戻ったようでした。

…しかし、その後も大阪桐蔭の勢いは止まりません。それとも、吉田の中にもう投げ続ける気力も体力も残っていないのか…。続く8番の小泉の打席は、外角のボール球をおっ付けた当たりがセンター前に落ちるポテンヒットとなり、二塁走者が生還。これで9点目。

続く9番の柿木はバントをし、ゴロを処理した吉田は素早く二塁へ送球しますが、判定はまさかのセーフとなり、さらに一塁もセーフ。何とこの展開でフィルダースチョイスとなり、もう完全に負の連鎖に嵌まったようでした。さすがの私もこの辺から見るのが辛くなってきました。。

半ば悲壮感を漂わせながら、それでも投げ続けるマウンド上の吉田。対して大阪桐蔭は、1番に帰って前の回で3ランホームランを放っている宮崎に打席が回ります。吉田は何とか140km台のボールを投げ続けますが、カウント1-2からインハイの直球を弾き返されて、打球はセンター前へ。二塁走者の小泉が帰り、これで10点目が入りました。

…一応、球速的にはそこそこの数値は出ているようですが、もうこれまで見せてきたボールの勢いというのは完全に失われてしまったようです。続く2番の青地もセンター前ヒットで出塁し、これで満塁。

ここで金足農ベンチ、再び守備のタイムを取って落ち着きを取り戻そうとします。一塁アルプスからも再び大きな声援が飛びます。

勝負に戻り、3番・中川に対しては初球を浅いセンターフライで何とか抑えました。…が、次のバッターは4番の藤原。遂にこの回だけで打者一巡してしまいました。

 

f:id:togesohei:20190428001241j:plain

泥だらけのユニフォームで打席に立つ藤原。その藤原がまたもや吉田に襲いかかります。外角のボールを捉えた当たりはあっという間に左中間フェンス手前まで伸びるツーベースヒットに。走者は二人帰ってこれで12-1となりました。

 

f:id:togesohei:20190428001311j:plain

5回途中でまさかの12失点。もはやノックアウト同然にまで追い込まれ、右手で顔の汗を拭うマウンド上の吉田。その先に立つバッターは……、

 

f:id:togesohei:20190428001347j:plain

今から12分前に特大ホームランを喰らった根尾です。根尾のこのイニング2回目の打席も、打球はレフトスタンドフェンス直前まで飛ぶ大飛球となりました。が、ここはレフトが予め深く守っていたため、何とかキャッチ。ようやく3アウトチェンジとなり、長い長い大阪桐蔭の攻撃が終了しました。

 

6回表

 

f:id:togesohei:20190428001428j:plain

前半戦を終えて、スコアは12-1と大阪桐蔭の大量リード。金足農は4回表まではまだ接戦に持ち込めていましたが、その裏から吉田がボール先行になり始め、疲れが出始めたのが全てだったのかなと今になって思います。

 

f:id:togesohei:20190428001507j:plain

特大ホームランを放った根尾はショートのポジションに就きます。これで今大会根尾が放ったホームランは計3本。まさに前評判に違わぬ活躍を最後まで見せてくれました。

一方の金足農の攻撃は、3番・ピッチャーの吉田から。大歓声の中打席に入った吉田は初球を打って、打球はショート左へのゴロ。これを根尾が捕球すると、深いところから一塁へ矢のような送球を決めてアウトにしました。いやはや、さすが投手としても150km近くを計測するだけあって、根尾は肩の強さも一級品です。

続く4番の打川はショートフライ、5番の大友は外角低めのスライダーを空振りの三振で、金足農またもや三者凡退に終わりました。そして裏の大阪桐蔭の攻撃へ……と、ここで、スタンドから大きなどよめきが起こりました。

 

f:id:togesohei:20190428001530j:plain

マウンドに上がったのは吉田ではなく、ここまでサードを守っていた打川。吉田はその打川に声をかると、一人ライトのポジションへと走っていきました。

 

 ……この夏、ここまで金足農のマウンドに上がってきたのは吉田輝星ただ一人でした。その事実は本人にとってエースの証であり、またプライドでもあったことでしょう。それが8月21日午後3時37分、遂に破られてしまい、外野へ一人向かう吉田の後ろ姿からは、こみ上げる悔しさや無念さの想いを感じずにはいられませんでした。

 

 

ーーーーーーーーーー

…………とここで、何とこれまで写真を撮ってきたCOOLPIX A900の充電がまたもや切れてしまいました!いやいや、ここまで気持ちセーブして撮ってきたはずなのに、まさか一試合も持たずに終了するなんて、完全に想定外ですって……。私としては、最後の優勝を決めて皆がマウンドに集まる瞬間を何としてもこのカメラに収めたかったのですが、それが叶わないとなった瞬間、完全に気持ちが萎えました。。

一応、その後の展開もスマホのカメラで撮ってはみたのですが、案の定クソみたいな写真しか撮れなかったので、ブログの方も6回裏以降の記述は割愛させていただこうと思います。。(まあ結果的に、そこまでが今日の試合のピークだったのですが、、)

 

f:id:togesohei:20190428002020j:plain

というわけで、一気に時間は飛んで9回表、スコアは13-2、二死無走者の状況。バッターは7番・菊地彪、対するマウンドには先発の柿木が未だ立ち続けています。柿木の投じた本日112球目のボールは、144㎞の直球がシュート回転して内寄りに入りました。菊地彪流し打ちしますが、打球はライトの青地のもとへ一直線。栄ある100回目の優勝のウイニングボールは、ライトを守る青地のグラブへと吸い込まれていきました。

その瞬間、マウンドの柿木へ大阪桐蔭の選手全員が集まり、優勝の歓喜の輪が広がりました。これで大阪桐蔭は夏5度目、春夏合わせて8度目の全国制覇です。そして史上初、2度目の春夏連覇が成し遂げられた瞬間でした。一大阪出身者として、本当に心から祝福したいと思います。(と同時に、こんな決定的な瞬間をアップで撮れなかった自分を、本当に恨めしく思います。。)

 

f:id:togesohei:20190428002051j:plain

再び選手達がグラウンドに整列し、挨拶。両チームの選手達が健闘を讃え合いました。

 

f:id:togesohei:20190428002115j:plain

そして大阪桐蔭の効果斉唱。「大和平野に 聳え立つ…」から始まるお馴染みの校歌が、今夏6回甲子園に響き渡りました。

 

f:id:togesohei:20190428002148j:plain

校歌を歌い終え、三塁側アルプススタンド前へ試合終了の挨拶に来た大阪桐蔭の選手、監督達。一礼すると、スタンドからは割れんばかりの労いの拍手と歓声が送られました。

 

f:id:togesohei:20190428002226j:plain

挨拶を終えて、ベンチの方へ戻る選手達。…その中に一人、泣き崩れて動けなくなる選手が。。

…それはキャプテンの中川でした。前述したとおり、中川はこの一年、春夏連覇を目指すチームを率いる重圧と、昨夏の自らのミスを取り返すための重圧と、二つの大きな重圧を抱えていました。恐らく、全国のどの球児よりも強い意志を持って野球に取り組んだ1年だったと思います。それが今、遂に報われたことで、これまでの想いが堰を切って溢れ出たのでしょう。

…それにしても、負けたチームの選手が泣くのは当然のこととして、勝って、しかも春夏連覇して優勝したチームのキャプテンが号泣するなんて、普通なら考えられないことです。しかもさらに驚いたのは、その中川キャプテンを慰めていたのは、チームメイトではなく、彼をキャプテンに任命した張本人である西谷監督だったということです。

監督がわざわざ号泣する選手を必死に介抱するという光景も、中々見られないことです。西谷監督としても、彼一人に特に大きな重圧を背負わせてしまったという責任感があったのでしょうか。この光景を通して、大阪桐蔭の監督と選手が、この1年、春夏連覇に向かって本当に本気で取り組んできたということが凄く伝わって来て、個人的にこれまで高校野球を見てきて一番感動したシーンとなりました。

(ちなみにこのシーン、後でTV中継の録画を見返してみたら、カメラが映しているのは吉田の方ばかりで、中川や西谷監督の方は普通に映し損ねていたんですね。お陰でこの光景をしっかりこの目で見られただけでも、わざわざ甲子園まで来た甲斐がありました。)

 

f:id:togesohei:20190428002303j:plain

…時間が経つにつれて感動の余韻も収まり、その後は優勝インタビュー、続いて閉会式が執り行われました。閉会式では第100回大会に合わせて60年ぶりに新調された“3代目“深紅の大優勝旗が、優勝した大阪桐蔭高校・中川キャプテンに手渡されました。

 

f:id:togesohei:20190428002410j:plain

次いで、優勝盾が副キャプテンの根尾に送られました。

 

f:id:togesohei:20190428002502j:plain

その後、準決勝した金足農に準優勝盾が、各選手それぞれに優勝メダル、準優勝メダルが送られ、最後に優勝チームと準優勝チームが場内を一周しました。

 

f:id:togesohei:20190428002602j:plain

誇らしげに行進する大阪桐蔭と金足農の選手達。みんな、本当に感動をありがとう。そう心に言い残して、晩夏に差し掛かる甲子園を後にしました。

 

ーーーーーーーーーー

以上、今年のお盆休みは5日間全て甲子園のために費やし、あとは新幹線で東京の自宅に戻り、翌日から普段の日常に戻ったのでした。それにしても今回は、徹夜で並んだにも関わらず入場できなかったりなど色々ありましたが、結果的には準決勝と決勝を生で観戦することができて良かったです。特に本日については、第100回目の決勝という記念すべき空間の中に自分もいられたということで、一生の思い出となりました。本当に高校野球は私にとって最高に面白いスポーツです。

…ただ、2日間まともに西日を浴びる三塁側アルプススタンドに居座り続けたことで、その後は日焼けでえらいことになりましたが(笑)

 

終わり