旅の記録

旅ブログです。

20180820 第100回全国高校野球選手権記念準決勝 金足農×日大三観戦記

8月20日(月)。私にとって三度目の挑戦、三度目の正直を果たす日がやって来ました。一昨日の雪辱を何としても晴らすため、最寄り駅から始発電車で阪神甲子園球場へ向かい、午前6時過ぎには現地に到着。前回は一塁特別自由席の列に並んで失敗したので、今回は人気が集まる内野自由席は避けて、アルプス自由席の列の方へ一目散に向かいました。

 

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目論み通り、アルプス席の列は始発で行っても高架下をはみ出ていない程度で、これなら何とかチケットは購入出来そうな感じでした。ただ、それでもご覧の通り、高架下はチケットを求める人で大混雑でしたが…。

さて、私のお目当てである大阪桐蔭は、本日は三塁側だったので三塁側のアルプスの列に並びました。そして待つこと20~30分。遂に念願のチケットを手に入れることに成功しました。これもひとえに、一昨日、昨日とチケット争奪戦に失敗したことによる執念があったからでしょう。

さて、無事にチケットを手に入れることが出来たと言っても、試合開始まではまだ三時間以上も時間があります。とりあえず、まずは甲子園球場併設のグッズショップに寄って、第100回記念大会にちなんだ限定グッズを色々物色してみることにしました。結果、記念球やらキーホルダーやらクリアファイルやら、何やかやで計3,000円以上もお買い上げ…。う~ん、やっぱり「第100回」という切りの良い数字は、ある意味で恐ろしい魅惑を秘めていますね…。

 

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とまあ、記念品も調達して満足したところで、いよいよ甲子園球場の中へ乗り込みます。席はなるべく内野席寄りでかつ上段の方が見やすいかなと思い、こんな感じの眺めが見える席を確保しました。昨日のバックスクリーンビューから見えた景色も素晴らしかったですが、やっぱり甲子園はどこから見ても素晴らしい眺めですね。それにしても、このように上の方から球場全体を見下ろしてみると、甲子園のスタンドはすり鉢状に縦に盛り上がっているというのがよく分かります。そのために、甲子園は他の球場よりもより大きく見えるんだな~、と改めて感じたりもしました。

 

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それから30分ほどが経ち、午前7時半頃。本日の第一試合に登場する一塁側の金足農(秋田)の選手たちが姿を現しました。金足農は今大会、公立高校として唯一のベスト4入りを果たしており、しかもその勝ち上がりを振り返ってみると、三回戦で強豪・横浜(神奈川)を相手に大逆転勝ちを収めると、準々決勝では近江(滋賀)を相手にサヨナラ2ランスクイズを決めるなど、今最も勢いに乗っているチームです。世間からの注目度も、この頃には既に最高潮に達していました。
(ちなみに、私はこの前日、梅田のヨドバシカメラにてNikon COOLPIX A900というデジタルカメラを購入したのですが、以後の写真は(これ以降の記事も含めて)基本的にはNikon COOLPIX A900で撮った写真を掲載しています。このデジカメよって、大幅なズームアップが可能&ズームアップしても格段に鮮明な写真を撮ることが出来るようになりました。)
 

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それからさらに一時間半程が経ち、午前9時頃。ようやく第一試合前のウォーミングアップが始まりました。三塁側では金足農と対戦する日大三(西東京)の選手たちがキャッチボールを行っています。
 

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三塁アルプスのフェンスを通して誰かと話をしているのは、日大三小倉全由監督です。日大三をこれまで夏二回の全国優勝に導いた文字通りの名将です。
 

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一塁側の金足農の選手たちもキャッチボールを始めました。試合開始一時間を切ったこともあり、スタンドはぎっしりと人で埋め尽くされてきています。
 

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一塁側のブルペンに向かうのは、背番号1を付けたエース・吉田輝星と、控え捕手の沢石和也。今回の金足農快進撃を最も牽引している吉田は、ここまで全ての試合で二桁奪三振を記録しており、まさに今大会No.1投手という前評判に違わぬ活躍を見せています。金足農躍進の最大の立役者ともあって、マスコミからの注目度もうなぎ登り。
 

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午前9時30分になり、グラウンドでは試合前のシートノックが開始されました。まずは日大三から。ノッカー役の監督が次々とノックを繰り出し、それに応える選手たちは軽快なグラブ捌きを見せ次々にボールを回していきます。…その流れるような一連のプレーは見ていて本当に気持ちが良いです。ちなみに、野球玄人の目からすれば、このシートノックでそのチームの力量がある程度分かると言いますが、、野球未経験の私にはさっぱりでした。

 

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プルペンでは、本日の日大三の先発である廣澤優が投球練習を行っていました。廣澤は背番号18を付ける二年生ですが、身長はチーム一高い189cm。三回戦の龍谷大平安戦でも先発しMAX148kmを記録しています。今年の日大三の投手陣は、試合途中で左腕の河村にスイッチするのが定番パターン。
 

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シートノックは続いて金足農。金足農はこれまで(県予選を含めて)試合に出ているのは背番号1~9の九人だけなのですが、逆に言えば背番号二桁を付ける選手は今夏まだ一度も試合に出ることが出来ていません。ある意味この試合前のシートノックが、控えの選手にとっては唯一甲子園でプレイできる時間と言えます。
 

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一塁側プルペンでは、引き続きエースの吉田が投球練習を行っています。果たして今日はどのようなピッチングを見せてくれるのでしょうか。
 

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シートノックの間に、スコアボードでは本日の先発メンバーが発表されました。先攻の金足農は不動のオーダー。一方で後攻の日大三は、先発・廣澤に加え高木、飯村と、前の試合から多少オーダーをいじってきました。

 

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シートノックが終わり、選手たちはアルプススタンドの応援団へ試合前の挨拶に向かいます。一・三塁側とも期待を込めた大きな拍手が送られました。
 

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応援団の方もどんどんボルテージが上がってきました。ちなみに、日大三の応援団の様子は、席が上段すぎたためにあまりよく見えませんでした(T-T)
 

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そして時刻は定刻となり、いよいよ第100回目の夏の甲子園準決勝、第一試合の幕が切って落とされました。両校の選手が整列し、後攻めの日大三ナインがグラウンドに散っていきます。
 

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さて、今大会は第100回目の記念大会ということで、かつて甲子園を沸かせた名選手が始球式を投げるという「レジェンド始球式」が連日行われています。本日の第一試合は、戦後最多となる甲子園通算20勝を上げた元PL学園(大阪)の桑田真澄氏です。野球ファンなら知らない人はいないまさに「レジェンド」の登場に、スタンドからはどよめきと大きな歓声が沸き起こりました。
 

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ちなみに、桑田氏は自身が高校二年(1984年)の夏、準決勝で当時初出場だった金足農と対戦しています。試合は、桑田氏自らが逆転ツーランを放つなどしてPL学園が金足農を破り、二年連続の決勝進出を決めているのですが、それから34年の時が流れ、始球式という立場から再び金足農と相見えるとは、何とも運命的なものを感じずにはいられません。

そんな注目の桑田氏の始球式。現役を引退して既に十年以上が経っているわけですが、果たしてどんな球を投げるのか…。そのボールは………

 

速い!!

 

予想以上に伸びのあるボールが、あっという間にキャッチャーミットの中に吸い込まれていきました。スタンドからも「さすが桑田だ!」という驚きと感心のどよめきが再度沸き起こり、最高の形で試合へと引き継がれました。

(ちなみに、この日の桑田氏は、他のレジェンドが皆アップシューズで投げている中、一人だけスパイクを履いているという本気ぶりだったそうです(^^;))

 

一回表

 

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レジェンド始球式の興奮冷めやらぬ中、金足農の1番・菅原天が左バッターボックスに入り、いよいよプレー開始です。日大三・廣澤の初球は、直球が低めに外れてボール。4球目、高めに浮いた変化球を菅原上手くバットに合わせてセンター前へ運び、先頭打者出塁です。

続く2番・佐々木大夢は最初からバントの構え。しっかり一塁へ転がして送りバント成功。一死二塁のチャンスに、バッターボックスには打者としても注目の3番・ピッチャー吉田が入りました。

 

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ここまで打率5割超えのハイアベレージを記録している吉田。しかしここは、フルカウントからサードゴロで凡退し、走者も動けず。

続く4番の打川は、2球目低めの変化球をすくい上げると、レフト、サード、ショートの間に落ちるポテンヒット。二塁走者が一気にホームへ生還し、金足農幸先良く1点を先制しました。

……が、守る日大三側も落ち着いていました。レフトの高木はボールを捕ると、冷静に二塁へ送球して打者走者の打川を二塁フォースアウト。3アウトチェンジとなり、金足農の攻撃を1点で凌ぎました。

 

一回裏

 

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1点のリードを貰いマウンドに上がった吉田。吉田はここまで県予選から9試合連続で完投を続けており、今日も中二日での登板となります。強打の日大三に対するには疲労の蓄積が心配されるところですが、果たして……。

まずは1番・金子に対しては初球変化球から入りストライク。4球目、合わせただけになった打球がショートヘ飛びますが金足農の齋藤よく捕って一塁へ送球し、1アウト。続く2番・木代はレフトフライに倒れ、3番の主将・日置へと回ります。

 

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日置は名門・日大三で1年秋からショートのレギュラーを勝ち取っている逸材で、U18の日本代表候補にも選ばれています。今大会はここまで打率.250と当たっているわけではありませんが、この打席は吉田の外角の球を引っ張ってレフト前に運ぶヒット。主将の快打にアルプス応援団も盛り上がりを見せます。

 

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吉田は走者を背負い4番の大塚を迎えますが、ここは日置が盗塁に失敗し、3アウトチェンジとなりました。

 

二回表

金足農の攻撃。先頭の5番・大友は2球目を左中間へ運ぶセンター前ヒット。金足農は1回に続けて先頭打者が出塁しました。

 

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続く6番・高橋は送りバントの構え。高橋は三回戦の横浜戦で8回裏に逆転3ランホームランを放っており(しかもこのホームランは自身高校初めてだった)、今大会のラッキーボーイの一人のはずですが、金足農の作戦はあくまで堅実。しかし、高橋は2ストライクから強行したバントを打ち上げてしまい、走者を進めることはできず。

続く7番・菊地彪も、1アウトですが同じくバントの構え。ところが菊地彪も、2ストライクからバントを空振りしてしまい三振。8番・菊地亮は内角高めの直球を詰まらせファーストフライで、この回の金足農の攻撃は無得点に終わります。

 

二回裏

日大三の攻撃。先頭の4番・大塚はショートライナー、5番・中村はファーストゴロで、2アウト。ここでバッターは、前の試合代打で同点打を放っている6番・高木。高木は勢いそのままに、一塁戦を抜けるツーベースヒットを放ちます。

さらに7番・飯村の打席では、3球目低めの直球をキャッチャー・菊地亮がこぼし、走者は三塁へ。日大三同点のチャンスが転がり込みましたが、その次の球、高めに浮いた直球を飯村捉えられず空振り三振。日大三チャンスを逃しました。

 

三回表

金足農の攻撃。先頭の9番・齋藤は、前の近江戦でサヨナラ2ランスクイズを決めた選手ですが、ここまでの試合でまだヒットは出ていません。

ところが、今日は低めの変化球をしっかり合わせて、一二塁間を破るライト前ヒット。今大会初安打を記録して、金足農は3イニング連続で先頭打者が出塁しました。

1番に帰ってバッターは菅原天。菅原は初球で確実に送りバントを決め、得点圏に走者を進めます。しかし続く2番・佐々木大夢はフルカウントからのサードゴロで、走者は動けず。

 

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二死二塁の場面で、バッターは3番・吉田。ここで廣澤はストライクゾーンにボールが入らず、吉田を四球で歩かせてしまいます。

 

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二死一・二塁のピンチに、日大三は守備のタイムを取って伝令を送ります。背番号17の船木がマウンドに向かい、一旦間を取ります。

しかし、廣澤は前の打席でタイムリーを放っている4番の打川にも、フルカウントから変化球を見極められ二者連続の四球。これで二死満塁の大ピンチを迎えます。

 

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三塁走者となった齋藤は、スタートを切っては戻りを繰り返し、廣澤に執拗にプレッシャーを掛けます。が、5番・大友は4球目を打ち上げてしまいファーストファールフライ。3アウトチェンジとなり、日大三は大ピンチを脱しました。

 

三回裏

日大三の攻撃は下位打線から。8番・佐藤英は2球目を打ち上げライトフライ。9番・廣澤はストレートを見逃し三振。トップに帰って1番・金子は低めの変化球をすくい上げたがレフトフライで、この試合初めての三者凡退に終わります。

 

四回表

金足農の攻撃。先頭・高橋はバットの先にボールが当たってサードフライ。7番・菊地彪は低めに落ちた球に手が出て空振りの三振。

二死から8番の菊地亮は三遊間への打球。ショートの日置はよく捕ったが送球間に合わず、ショート内野安打となります。

 

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走者が出て9番・齋藤は2アウトですがバントの構えを見せて相手を揺さぶります。そして2ストライクから高めの球を合わせて打球は二遊間を抜ける。センター前ヒットで二打席連続の安打となり、一塁走者は一気に三塁へ進みました。

 

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二死無走者から連打が出てランナー一・三塁。金足農またもチャンスを掴みましたが、ここで日大三は投手を左腕の河村にスイッチ。

一塁アルプスはチャンスにタイガーラグ(※1)が演奏され盛り上がりを見せますが、1番・菅原天は高めの直球に手が出てしまい空振りの三振。日大三はまたもピンチを脱しました。

 (※1)

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四回裏

日大三の攻撃は2番からクリーンナップに繋がる好打順。しかし、先頭の木代は直球を空振り三振。続く日置もバットの先に当たったピッチャーゴロで、簡単に2アウト。

そして4番・大塚もショートへのゴロとなりましたが、ここでショートの齋藤がボールをこぼし送球が間に合わず。2アウトからエラーでランナーが出塁しました。

 

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ここで5番・中村はフルカウントから外角の球をしっかり合わせ、レフト前へ運びます。一塁走者の大塚は一気に三塁へ。

 

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二死無走者から一転、二死一・三塁のチャンスとなり、今度は三塁側アルプスで日大三の応援曲「Chance」(※2)が奏でられ盛り上がりを見せます。しかも次の打者は、前の打席でツーベースを放っている高木。

対する吉田は、カウント1-2に追い込んでから、しばらく待って一塁に牽制球を送りました。鋭い球が放たれましたが判定はセーフ。ファーストからボールが返されると、続けてもう1球牽制し、これもセーフ。

2球牽制を続けた吉田は、セットポジションに入って暫く動きません。

「……1………2………3」

……まだ投げない……、

「………4………5……」

ここでようやく動きを見せたと思ったら、またもや一塁に牽制(判定はセーフ)。たまらず私の隣に座っていた日大三贔屓のおっさんが、

「おい!早く投げろよ!!」

と文句を付けてきたその瞬間、吉田一転クイックモーションから打者へ投球!外角高め143kmの直球にバッター思わず手が出て空振り三振!!

日大三としてはチャンスを逃し、隣のおっさんも

「何であんな高めの釣り球振るんだよ!!」

と悔しそう。が、私としては「振った」というより「振らされた」というのが率直な印象でした。

バッターとしても、吉田が再三牽制を挟んできたことで、隣のおっさんと同じく「早く投げろよ」という心境だったことでしょう。そうして打者の打ち気が逸れたところで、急にクイックで投げ、しかも安全圏であるボール球でしとめる……。まさに見事な投球術で、完全な吉田の作戦勝ちだったと言えます。まだ高校生にも関わらず、この打者心理を弄ぶようなピッチングには、私も本当に感心しましたし、このシーンが今日の試合で断トツに印象に残ったプレーとなりました。

 (※2)

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五回表

ピンチの後にチャンス有り。金足農の攻撃は先程の回と同じく、2番から上位に繋がる好打順。日大三は2、3番が凡退してしまいましたが、金足農の方は2番・佐々木大夢がフルカウントから四球で出塁すると、3番・吉田は一塁に勢いを殺した犠打をしっかりと決めて、走者は二塁へ。

 

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4番の打川に期待がかかりますが、ここは河村が踏ん張りました。クロスファイアになる直球で空振りの三振にしとめ、2アウト。

しかし、続く5番・大友は低めの変化球を上手く合わせてセンター前へ運びました。二塁走者一気にホームへ帰り、金足農待望の追加点が入ります。さらに打者走者も二塁に進みました。

 

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差を2点に広げられ、さらにランナー二塁のピンチに、日大三本日二度目の守備のタイムを取ります。続く6番・高橋は初球弱い打球のセカンドゴロとなり、3アウトチェンジ。金足農5回の攻撃は1点止まりとなりました。

 

五回裏

そろそろ1点でももぎ取りたいところの日大三の攻撃。先頭の7番・飯村は外角の球を引っ張ってライト前へ運びます。

続く8番・佐藤英は初球を送りバント。ピッチャー前に転がった打球は吉田捕ろうとして少し体勢を崩したものの、しっかりと踏ん張ってすかさず二塁へ送球。走者フォースアウトとなり、送りバント失敗となりました(打者走者はセーフ)。このプレーは吉田のフィールディングの上手さと、何よりバランスを崩しても踏ん張ることの出来る体幹の強さを象徴する場面でした。

続く9番・河村もバントの構えを見せますが、2ストライクからの直球を空振り三振。1番に返って金子の打席では、吉田執拗に一塁へ牽制を挟みます。しかし、4回目の牽制で送球が外れ、走者は二塁へ(記録は一塁手の失策)。二死二塁となりましたが、金子はカウント3-1から外角低めの球を打ち上げレフトフライ。この回も日大三得点ならず、2-0金足農のリードで前半を折り返しました。

 

六回表

グラウンド整備を挟んで後半戦、金足農の攻撃。先頭の7番・菊地彪はショートへのゴロを放ちますが、日置上手いグラブ捌きを見せて1アウト。

8番・菊地亮は真ん中寄りに入った低めの直球を合わせ、打球は一二塁間を抜けてライト前へのヒット。続く9番・齋藤が送りバントをしっかり決め、二死二塁。

トップに帰って1番・菅原天の打席では、カウント3-1からの変化球が暴投となり、キャッチャーはじく。この間に走者は三塁へ進み、二死一・三塁と金足農チャンスを広げます。

 

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ここで2番・佐々木大夢の打球はピッチャーの横を抜け、二遊間を抜けるヒット!………と思いきや、ショートの日置がよく捕って二塁ベースを踏み、3アウトチェンジ。日大三、主将の好守でピンチを脱しました。

 

六回裏

日大三の攻撃。2番・木代はフルカウントからの詰まった打球がセカンドへのゴロとなり、1アウト。続く打者は先ほど好守を見せた主将の日置ですが、ここで吉田、日置の左手に直球をぶつけてしまい、死球で走者を出します。

しかし、続く4番・大塚は初球スプリットを打ち上げライトフライ、5番・中村もショートライナーで、日大三この回も得点ならず。

 

七回表

金足農の攻撃は3番・吉田から。吉田の打球はセカンド方向へのフライがかなり流されたものの、セカンドの木代しっかり掴んで1アウト。

続く4番・打川の打席はフルカウントからの球が高めに抜けて、四球で出塁。5番・大友が初球犠打をしっかり成功させて、二死二塁。しかし6番・高橋はサードゴロに終り、金足農もまた得点ならず。

 

七回裏

日大三の攻撃は6番・高木から。高木は外角の球を引っ張ったがセカンドゴロで1アウト。続く7番・飯村も初球、緩い低めの球を引っ張ってファーストゴロ。8番・佐藤英は外角低め147kmの直球に手が出ず見逃し三振。日大三、三回以来の三者凡退で得点への糸口すら掴むことができません。

 

八回表

金足農の攻撃。先頭の7番・菊地彪は初球を引っ張りサードライナーに倒れますが、続く8番・菊地亮は低めの球を左中間へ運びツーベースヒット。

 

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続く9番・齋藤は四球となり、日大三としては一死一・二塁のピンチ。ここで日大三ベンチ、再びピッチャーを交代させます。河村に代わってマウンドには二年生の井上が上がりました。

 

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井上は春は主戦投手として活躍していたものの、その後は怪我で夏の都大会予選は登板ゼロ。甲子園に入ってからようやく実践に復帰すると、二回戦の奈良大付戦では先発を任され、3回を無失点に抑える好投を見せています。

 

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打順は1番にかえって菅原天。菅原は井上の初球を見逃さず、打球は二遊間を抜けてセンター前に運ばれました。が、日大三外野陣は前進守備を取っていたため、二塁走者は本塁に帰れず。金足農にとっては得点ならずも、なおも一死満塁と絶好の追加点のチャンスです。

 

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ここで日大三守備陣は三度目の守備のタイムを取りました。一方で、一塁側アルプスからはGフレア(※3)の応援曲が鳴り響き、場内からも手拍子が沸いています。まさに完全な金足農ペースに球場が包み込まれる中、2番・佐々木大夢は2球目、バントの構えだけを見せて見送り。そして3球目、満を持して金足農得意のスクイズを敢行するも、ここは日大三バッテリーがよく読んでいました。ボールを外角に外して三塁走者を三本間に挟み込み、三塁走者をアウトにします。二死二・三塁になったところで、佐々木大夢はライトフライに倒れ3アウトチェンジ。日大三、どうにか大ピンチを脱しました。

(※3)

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八回裏

ピンチの後にチャンス有り。日大三もこれを証明できるか八回裏の攻撃。先頭の9番・柳澤はショートゴロに倒れますが、トップに帰って1番・金子は低めの直球を弾き返してライト前に運び出塁します。

続くバッターは2番・木代。三塁側アルプスからはChanceの応援歌が鳴り響く中、木代は内角の球を上手く流して打球は三遊間を抜けました。

 

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今度は金足農が一死一・二塁のピンチ。ここで金足農、本日初めての守備のタイムを取りました。

 

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続いて打席に入ったのは3番・日置。日置は低めの落ちる球をすくい上げると、打球は高々とレフト方向へ。が、打球は風に押し流されレフトフライとなりました。しかしこの間にタッチアップで二塁走者は三塁へ。

 

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続くバッターは4番・大塚。日大三にとってはなおも二死一・三塁のチャンスに、吉田は2ストライクまで追い込んだものの決め球に投じた内角直球を大塚、詰まりながらもレフト前に運びました。三塁走者が帰り日大三、ようやく待望の一点を返しました。

 

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スコア2-1となり、なおも二死一・二塁と日大三得点圏のチャンス。金足農としてはこれ以上点をやれない場面ですが、続く5番・中村は空振り三振に切って取り、吉田この回を何とか1点で切り抜けました。

 

九回表

金足農としては1点を取られはしましたが、この回はクリーンナップから始まる好打順。しかし、先頭の吉田はファウルで粘った末に144km直球を空振り三振に倒れると、4番・打川はセカンドフライ、5番・大友はショートゴロと、この試合初めての三者凡退に終わりました。

日大三としては、最終回にして初めて金足農打線を完璧に抑え込んだことになります。特にこの回は井上のピッチングが素晴らしく、直球のほとんどが140km台中盤を計測するという圧巻の内容で、まだ二年生ということから来年への期待を抱かせるとともに、次の味方の最後の攻撃へ向けて望みを繋ぎました。

 

九回裏

 

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そしていよいよ九回裏。八回にようやく1点を返し、直前の回も三者凡退に切って取って流れに乗る日大三を、金足農・吉田はどう抑えるか。

先頭バッターは6番・高木に代わって代打・小沢。しかし、小沢は外角の球を引っ張ってセカンドゴロに倒れます。

審判からアウトが宣告されると、場内からは拍手喝采という異様な空気に包まれます。前の回以上に金足農ペースの雰囲気の中、続く7番・飯村も145kmの直球を完全に打ち損じ。打球は吉田が捕りましたが、しかし一塁手がベースを離れており投げることができず。結果はピッチャー内野安打で、日大三、結果オーライの形で同点のランナーが出塁しました。

 

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金足農、すかさず二度目の守備のタイムを取って落ち着きます。

続く8番にも代打が出て、バッターボックスには前田が入ります。その初球、前田の打球は三塁を強襲!サードの打川よく捕りましたが、送球間に合わずこれも内野安打となり、一死一・二塁とチャンスを広げます。

………しかし、最後は吉田が踏ん張りました。9番・柳澤の打球はレフト正面へのフライ。1番に帰って金子もセンターへ打ち上げ、打球は少し流れましたがセンター・大友、がっちり捕って3アウト。ゲームセットで金足農が見事決勝進出を決めました。甲子園の決勝は同校にとって史上初、秋田県勢としても実に103年ぶりという快挙でした。

 

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試合終了のサイレンが鳴り響く中、両校ナインが整列し、挨拶、握手。お互いの健闘を称え合いました。

 

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そして勝利した金足農の校歌斉唱。金足農の校歌と言えば、その歌詞やメロディというより、整列した18人の部員全員が背中を大きく後ろに反らせ、全力で校歌を歌い上げる「全力校歌」が昔からの名物でしたが、それは平成最後のこの大会になってもしっかりと受け継がれていました。…何とも昭和チックで古風な伝統とは言えますが、しかし見る者にとっては清々しさが感じられ、何よりやっぱり、何事も「全力」でやり切るということはいいことですね。今回実際に生で見ることができて良かったです。

 

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校歌斉唱が終わると、選手たちはアルプススタンド前まで走って行き、応援団に向かって一礼。一塁側アルプスからは、明日の決勝に向けた激励の大歓声が飛び、三塁側からもこれまでの活躍に対する労いの拍手がかけられました。

 

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決勝目前で金足農の前に散り、悔し涙を流しながら三塁ベンチに戻る日大三の選手たち。私は日大三贔屓でも何でもありませんが、さすがにこの光景を間近で見てしまうとウルっと来るものがありました。高校野球に敗れた者の涙はつきものですが、その悲壮感は実際にその場に身を置いてみないと中々分からないものです。そしてその悲壮感こそが、ある意味で高校野球の生観戦における一番の醍醐味と言っていいかもしれないと今回思いました。

 

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最後に甲子園の土を拾い集める日大三の選手たち。その向こう側では、第二試合を戦う大阪桐蔭の選手たちが既にノックを始めていました。わずか数分前に夢絶たれた者たちと、これから戦いに挑む者たち。そのコントラストは余りに対照的で、残酷で、現実の厳しさというものを感じずにはいられませんでした。

そして私としても、次の試合が本日の本番です。この第一試合に続く熱戦を期待して、第二試合開始のときを待ちました。

 

続く