旅の記録

旅ブログです。

20180617 岩室観音と吉見百穴

突然ですが皆さん、学校で日本史の授業を受けていたら必ず、古墳の話が出てきたでしょう。主に4世紀から6世紀にかけて造られたという古墳は、当時の権力者のお墓と見られており、その数や規模は地域別に見ると近畿地方が圧倒的にNo.1です。これは、当時の日本の中心が畿内にあったことを如実に示す考古学的資料となっています。

しかし、ここで学校の先生は更に一歩踏み込んで「近畿“以外“にも大規模な古墳はあった」ということまで補足して説明してくれるはずです。そのときの一例としてよく取り上げられるのが、埼玉県にある「吉見百穴」という古墳です。

吉見百穴はその名のとおり、岩山の斜面に幾数もの“穴“が空いており、その穴が墓室として使用されているという誠に珍しい古墳のことです。資料集を開けば吉見百穴の写真が掲載されているのですが、見れば他の古墳とは明らかに異質な感じであるということが一目で分かります。そんな吉見百穴が、今では近くとまでは言わないけれど、日帰りでは行ける距離にあるということで、今回行ってみることにしました。

 

東松山駅に降り立つ

 

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吉見百穴の最寄り駅は、東武東上線東松山駅となっています。吉見百穴の所在自体は埼玉県比企郡吉見町なのですが、どうやら吉見町には鉄道が通っていないようです。

 

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東松山駅の駅前にはこんなものがありました。2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章先生の記念碑です。梶田先生はここ東松山市のご出身なんですね。記念碑の隣には梶田先生が研究していたニュートリノについての説明文が子供向けに書かれていましたが、素人には子供向けでもさっぱり理解できませんでした…。

 

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東松山駅から吉見百穴へのアクセスはバスが一般的なようでしたが、それでも20分ぐらいかかります。徒歩だとそれプラス10分くらいで、道順も駅東口から延びる県道を沿って行けばいいだけだったので、今回は徒歩で行くことにしました。

道中は、埼玉県郊外の街ということもあってか殺風景な風景が広がっていましたが、まあこういう感じが日本の典型的な街並みと言えるのでしょう。歩き始めて20分ほどで「百穴入口」というバス停に辿り着きましたが、バスの人もここからは徒歩で向かうことになります。

 

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バス停からさらに3分程歩いたところで、川を越えると吉見町の標識が見えてきました。吉見百穴はこの先の交差点を左に曲がったところにあります。

 

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交差点の反対側には「吉見町」と肩を並べるようにして「吉見百穴」の案内が。その周りには何故かキリンさんやゾウさんのミニチュアがいますが…。後ろには鬱蒼とした林が生い茂っています。

 

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交差点を左へ曲がると、吉見百穴の入口にまだ辿り着いてないのにもう穴が空いている箇所を見つけてしまいました。これも吉見百穴の古墳群のうちの一つに入るのでしょうか。

 

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そして入口近くまで来ると、手前に崖と崖に挟まれた形で小さなお堂がぽつんと建っていました。このお堂は岩室観音堂といい、吉見百穴を観光する際は毎回セットで取り上げられている有名なお堂です。観光客も幾らか見かけたので、せっかくだしお堂の方へも行ってみました。

 

岩室観音堂

 

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中は周囲の崖を支えにして造られた木造建築となっており、また崖を削った洞穴の中に石仏を安置しているなど、周辺の環境をよく利用したお堂であるということがよく分かりました。ちなみにここにある石仏は全部で88体あり、これらを拝むだけで四国八十八ヶ所を巡拝したのと同じ効果が得られるということなのですが、果たしてそんな都合のいいことがあるのでしょうか。

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お堂は二階建てとなっており、上の階にも上がることができます。上がってみると、天井等の辺り一面にお札が無造作に貼られており、少し狂気じみた感じがしました…。

 

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二階から下の様子は、道路側は上の写真のような殺風景な風景でしたが、その反対側は舗装も何もなされていない、まるでジャングルのような光景でした。

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好奇心に駆られて、私もジャングルの方へ行ってみます。こちらの細道は写真だと分かりづらいかもしれませんが、 傾斜があり結構上っています。しかも、前日に雨が降った影響で下はぬかるんでおり、手すり等体を支えるものもないので、抜けるのにかなり難儀しました。もしここへ来る予定があるのなら、下は動きやすい靴で、また服装は最悪汚れてもいいもので来た方がよさそうです。

 

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細道を抜けると草原だった。う~ん、まさかここまでジャングルな光景が広がっているとは予想外でした。気分はもはや探検隊の心持ちです。辺りには蚊がうようよ飛んでおり、たまに蜂も飛んでおり、さらには蛇までおり(野生の蛇を見かけたのは人生初でした)、あんまりお目にかかりたくない生物の宝庫でした。とりあえずこの場所にいるだけでは何もないので(遠くに吉見百穴はかすかに見えましたが、写真下の中央部)、適当に辺りを散策してみることにしました。

 

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何も考えず東の方へ進んでみると、不自然に開放的な広場に辿り着きました。中央部にはこれまた不自然に整然と並べられた段差が。ここはかつて15世紀後半から17世紀初頭にかけて存在した松山城というお城の跡地であり、現在は国指定の史跡に登録されている歴史的な場所です。しかし、往時の松山城を偲ばせる遺構はこの段差ぐらいであり、ロマンチックな感じにはあまり浸れなかったですね。観光客も私以外には夫婦一組しかいませんでした。

 

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あんまり奥まで行き過ぎると道に迷いそうだったので、松山城跡を見たところで引き返し、元の場所まで戻って来ました。最後に岩室観音名物(?)の胎内くぐりをやってみました。お堂の裏側左手にあるこのハート型をした穴をくぐると、諸難を除き安産その他の願い事が叶うということです。ただ、ブログのネタ調達とはいえ、20代男性が一人で行うには余りにも哀しすぎる&恥ずかしい光景となりましたが、まあいい経験になりました。

 

吉見百穴

 

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岩室観音だけでもかなり楽しめてしまいましたが、いよいよ本日のお目当てである吉見百穴へと向かいます。入口で入場料として300円を支払い、中へ入ります。

 

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中に入るといきなり百穴とご対面。そのほかには土産物屋もあり、中はよくある日本の観光地といった雰囲気でした。

 

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百穴を改めて見てみると、この光景はやはり異質という他ないです。また、穴の数は全部で219個あるそうで、名称の「“百“穴」というのはあくまで数の多さを強調しているに過ぎないようです。

 

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まずは一番下の穴から入ってみますが、こちらはお墓として掘られたものではなく、先の大戦で軍需工場用に作られたもので、現在は跡地として自由に中を見学できるようになっています。

 

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中は非常にひんやりとしており、この日は6月なのでそこまで暑いわけではなかったですが、夏場に来れば凄く過ごしやすい所なんだろうなー、と思いました。また、内部は軍需工場跡地というだけあって見た目よりかなり広大で、また薄暗さもあってか一種の不気味さも感じられました。

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穴を出ると、今度は吉見百穴もう一つの名物であるヒカリゴケの展示を見つけました。この苔は特定の生育環境でないと自生しない非常に珍しい苔だそうで、国の天然記念物に指定されているほどです。吉見百穴の穴の中はたまたまその環境に適しているということです。

 

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穴の中からヒカリゴケの様子を覗いてみましたが、太陽の光に当たると苔が黄金色に輝くそうなのですが、う~んよく分からん…。

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最後に、墓室となっている穴々の中の様子を見て回りました。よく見ると中が段差によって仕切られている箇所がありますが、恐らくその奥に死者の亡骸が安置されていたのでしょう。中の大きさは自分の体でギリギリ入れるぐらいの感じでしたが、中に入って大丈夫なのかは分からなかったため、入りませんでした。

 

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穴の他には、こちらの埋蔵文化財センターというところで、子供向けの勾玉や埴輪の製作体験教室もやっていました。ここは地元の子供たちへの歴史学習の場としての役割も担っているようです。センター前には写真下のような埴輪が飾られていましたが、これらもその体験教室で作られたものなのでしょうか。

 

 

岩室観音から吉見百穴と一時間ほど観光しましたが、適度に運動したこともあってか中々濃い時間を過ごせました。ここまで来るのにアクセスはあまりよくはありませんでしたが、吉見百穴はこの目で一度は見てみたいとずっと思っていたので、今回わざわざ見に来てみて良かったと思います。